
この記事はこんな方にオススメ!
・自分の予想が当たらなかった理由を分析したい
・次走の狙い馬を見つけたい
・競馬予想を本気で極めたい
レース概要


舞台は東京競馬場・芝2400m。桜花賞を戦った馬たちが、距離延長という壁に挑み、“真の女王”の座を懸けてしのぎを削る、3歳牝馬限定の一戦。
牝馬にとっては未知の長丁場となるこのレースでは、スピードだけでは通用しません。持久力、精神力、そして操縦性…あらゆる総合力が試される“総合女王決定戦”とも言える一戦です。
桜花賞上位馬が距離不安を抱えている一方で、別路線組や血統背景にスタミナを備えた馬たちが一気に台頭する構図も珍しくなく、波乱含みのレースです。
レース
前夜の雨が馬場に影響を与え、大方の注目を集めていたコンディションは「稍重」でスタート。午後には「良馬場」と発表されましたが、レース全体を通して、走りやすいとは言えないタフな馬場状態だったのは間違いありません。
レースはエリカエクスプレスがハナに立ち、最初のコーナーへ。最内枠からスタートしたアルマヴェローチェは、下げることはせず馬場の内側を追走しました。
1番人気に支持された桜花賞馬エンブロイダリーは、馬群に囲まれる苦しい位置取り。なかなか折り合いがつかず、道中を上手くやり過ごすことができませんでした。
前半600メートルは34秒8という速いペースで流れましたが、向正面では一転してペースが落ち着き、各馬が態勢を整えながら3〜4コーナーを回って直線勝負へ。
直線でエンブロイダリーの脚は伸びず、馬群の中に沈む形に。そんな中、馬群の真ん中からアルマヴェローチェが抜け出しを図ると、外からはカムニャックが鋭い末脚を伸ばして猛追。
ゴール前は、内のアルマヴェローチェと外のカムニャックによる一騎打ち。カムニャックがアタマ差でオークスを制しました。
惜しい2着にアルマヴェローチェ、3着には後方から内を突いた10番人気の伏兵タガノアビーが差し込み、波乱の結末に。桜花賞組では、好走したのはアルマヴェローチェのみで、他の有力馬は馬券圏外に沈む結果となりました。
桜花賞上位組が直面した“課題”と、それを乗り越えた一頭
桜花賞で上位に入った馬たちは、いずれも高い能力を持つ実力馬ばかり。しかし今回のオークスでは、それぞれに明確な課題を抱えてのレースとなりました。
1番人気に支持されたエンブロイダリーは、距離の壁に直面。1600mではその瞬発力が武器となっていましたが、2400mの舞台では折り合いを欠き、末脚も不発に終わりました。
リンクスティップは持ち味の持続力を活かす競馬ができず、瞬発力の差を実感させられました。エリカエクスプレスも先手を取ったものの、終盤の伸びを欠く形に。
そんな中で唯一、好走を見せたのがアルマヴェローチェです。最内枠という有利とはいえない条件下でも、岩田望来騎手の完璧なリードもあり、2着に食い込む見事なレースを見せました。2歳女王としての意地と安定感が光った一戦でした。
もちろん、他の出走馬たちにも様々な試練がありましたが、「総合力を問われる舞台」であるオークスにおいては、どんな条件下でも自らの力を発揮できるかが、勝負の分かれ目。だからこそ、この舞台で勝つということの価値と重みが、一層際立ちます。
上位馬の評価
1着 カムニャック
跳びの大きな走りが特徴のカムニャック。その個性を最大限に活かした立ち回りが光りました。
道中は終始、馬場状態の良い外目を追走。直線では、前に壁を作ることもなくスムーズに加速し、そのまま力強く伸びていきました。枠順や馬場状態に恵まれた部分もあったとはいえ、持ち味を発揮した見事なレース運びでした。


血統に見るポテンシャルは“キタサンブラックの再来”だけではない
カムニャックは、ブラックタイド産駒としてはキタサンブラックに次ぐ2頭目のG1勝ち馬となりました。さらに注目すべきは、母父にサクラバクシンオーを持つ点。これはキタサンブラックとも共通しており、単なる偶然とは言い切れない血統背景です。
実は、ブラックタイドとサクラバクシンオーの組み合わせは相性が良いことは偶然ではありません。これまでのブラックタイド産駒の重賞ウィナーを見ても、その傾向が見て取れます。
• マイネルフロスト(母系にプリンスリーギフト)
• フェーングロッテン(母母父サクラバクシンオー)
• ライジングリーズン(母系にネヴァービート)
プリンスリーギフトやネヴァービートといった血は、サクラユタカオーを経由してサクラバクシンオーへと繋がり、そのサクラユタカオーこそが、ブラックタイドの潜在能力を引き出す鍵となっているようにも思えます。
余談ではありますが、今回人気の一角だったリンクスティップが、父キタサンブラックで母系にはサドラーズウェルズとキングマンボという重厚な血を持ち、カムニャックとよく似た構成です。
「リンクスティップを絶対買うと豪語した僕なら、カムニャックも押さえておかないといけなかったな」と、終わってから反省をしてしまいましたが、ビッグレースの瞬発力勝負で勝ち切るとは、これもまた競馬の面白さ。素晴らしい勝利でした!
2着 アルマヴェローチェ
“たられば”になってしまいますが、もしアルマヴェローチェの枠がもう少し外だったなら。そう思わせるほど、見事な走りを見せてくれました。
レースでは、終始荒れた内を通る苦しい立ち回りを強いられました。しかも、位置取りとしては少しでもタイミングを誤れば、すべてが壁になるような、非常にリスクの高いポジション。
それでも、岩田望来騎手の冷静な騎乗で直線では一瞬のスキを突いて抜け出し、勝ち負けに持ち込んだ姿には脱帽です。それだけに、やはり勝ったカムニャックを褒めるしかありません。


アルマヴェローチェの父は、欧州の名馬ハービンジャー。オークスとも非常に相性の良い血統です。
そして注目すべきは、母母父にカムニャックと同じくサクラバクシンオーの血を持っている点。ここでもまた、両馬に共通する“血の力”が浮かび上がってきます。
それにしても、アルマヴェローチェを本命にしながら、なぜカムニャックに目を向けなかったのか。レース回顧をしながら、思わず胸が痛くなります。
アルマヴェローチェは母系がスピード主体の血統で、2400mがベストとは言い切れないタイプ。それでも、持ち前の総合力でこれだけのパフォーマンスを見せたのは、さすが2歳女王といったところです。
距離・枠・馬場という条件に課題がありながらも堂々の2着。今回の悔しさをバネに、今後のG1戦線でも必ずや注目を集める存在となるでしょう。今後の成長と飛躍が楽しみな一頭です。
3着 タガノアビー
スタートが出る馬ではありませんが、隣の馬との接触も重なって最後方へ下がってしまいました。そのあとは無理に位置を取りに行くことなく、自分のリズムを守りながら追走。
直線では他の馬たちが避けるようにしてできた“空白のイン”を突く選択肢を選びました。
確かに、進路がポッカリと空いたのは“運”かもしれません。しかし、その荒れた内を駆け抜けてきた底力は本物。見事な末脚で10番人気ながら3着に飛び込む健闘を見せました。
特筆すべきは、藤岡佑介騎手の冷静な判断力です。コーナーでは、ギリギリまで外へ持ち出せるポジションをキープしながら、他の馬たちの動きをじっくり観察。外へ流れていく馬が多いと判断した瞬間、一気に内へと舵を切るその決断力は、まさに職人芸。
そして、その指示に即座に応え、馬場の悪いインをまっすぐ伸びてきたタガノアビーの反応も見事でした。馬と騎手が一体となって成し遂げた、まさに“静かなるコンビプレー”と言える内容です。


血統的には、父アニマルキングダム、母系にもパワー型の要素が色濃く、どちらかといえば“ダート寄り”の配合。しかし、アニマルキングダムのルーツには欧州のスタミナ血統があり、それが今回のような溜めて一気に伸びる競馬にはフィットしている印象を受けました。
さすがに、今後2400mという距離に再挑戦する可能性は高くないでしょう。しかし、この末脚は条件が合えば高いレベルでも通用するはず。今後、どの距離・舞台で再び輝くのか、非常に楽しみな存在です。
次走狙い馬(ドーベル印)
6着 ウィルサヴァイヴ
父は2017年のダービーで5着に入ったアルアイン。その後もマイル〜中距離戦線で堅実に活躍した馬で、産駒にも粘り強さが受け継がれています。
今回のウィルサヴァイヴも、直線で見せた末脚には素質の片鱗を見せるような、光るものがありました。上位勢には届かなかったものの、ラストの爆発力は印象的で、今後の成長次第ではG1でも十分通用しそうな手応え。
京都・阪神でこそ真価を発揮しそうなタイプで、秋華賞が楽しみです。夏を越えての変わり身に、大きな期待を寄せたい1頭です。
7着 ブラウンラチェット
レース中盤まではリズム良く走っていたように見えましたが、3〜4コーナーで馬群が一気に詰まった場面で嫌気を見せ、そこが痛かった印象です。
それでも、レーン騎手は直線で末脚を最大限に活かすためにじっくり溜め、最後までしっかりと脚を使わせる騎乗を見せました。フットワークの大きさや、追って味のある走りからも、ポテンシャルの高さは明白です。
父系にはディープインパクト、母父にはAPインディと、息の長い活躍ができる優れた血統背景。メンタル面での成長さえ伴えば、G1でも十分勝負になる素材です。これからの変化に注目したい一頭です。
まとめ
オークスという一戦を終えて、ここからは各馬がそれぞれの適性や課題に応じて、自分に合った道を歩んでいくことになるでしょう。クラシック路線をそのまま進む馬もいれば、距離や舞台を変えて新たな可能性に挑む馬もいるはずです。
そして、これから迎える夏には、まだ名が知られていない“上がり馬”たちの台頭も予想されます。春の主役たちに挑む新星の出現は、競馬の醍醐味の一つでもあります。
秋には、いよいよ牝馬クラシックのラスト1冠・秋華賞が控えています。どんな顔ぶれがその頂点を目指して戦いを繰り広げるのか。今から想像するだけで、胸が高鳴ります。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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